2.天文(月・星・太陽・宇宙)

冬らしさに関する季語:
   
(時雨/しぐれ shigure、小夜時雨 sayo shigure、朝時雨asa shigure、夕時雨yuu shigure、
    時雨雲shigure gumo、時雨心地shigure gokochi、時雨の色 shigure no iro、村時雨 murashigure)
      晩秋から初冬にかけて降ったりやんだりする小雨。

     今日ばかり人も年よれ初時雨       松尾芭蕉
     初しぐれ猿も小蓑(こみの)をほしげ也       松尾芭蕉
     旅人と我が名呼ばれん初時雨       松尾芭蕉
     みのむしの得たりかしこし初時雨     与謝蕪村
     楠の根を静かにぬらす時雨かな     与謝蕪村
     初時雨しかと心にとめにけり     正岡子規
     しぐれふるみちのくに大き仏あり     水原秋櫻子
     しぐるるや堀江の茶屋に客ひとり     芥川龍之介
     うしろ姿の時雨てゆくか     種田山頭火
     しぐるる夜客の一人に寂聴尼     鈴木真砂女

   (霜/しも simo、霜夜 shimo yo、初霜 hatsu shimo、霜柱 shimo bashira、霜崩れshimo kuzure、
    霜晴 shimo bare、霜日和 shimo biyori、霜の花 shimo no hana、霜の声 shimo no koe)
 

     木(き)揺れなき夜(よ)の一ツ時や霜の声     大須賀乙字
     霜柱いたずらっ子の靴の跡     稲森如風
     一歩二歩カラリと心霜柱     稲森如風
     サックサク子どものころも霜柱     稲森如風
 

   (霰/あられ arare、初霰 hatsu arere、玉霰 tama arare、雪あられ yuki arare)

     道訊きにゆきし子を待つ父へ霰     中村草田男
 

   (霙/みぞれ mizore、霙れるmizo reru、雪まじり yuki majiri、水雪 mizu yuki、氷雨 hi same)

     来る花も来る花も菊のみぞれつつ     久保田万太郎
 

   (雪/ゆき yuki、雪明り yuki akari 、雪雲 yuki gumo、雪煙り yuki kemuri、雪の声 yuki no koe、
    雪時雨 yukishigure、雪の花 yuki no hana、粉雪 kona yuki、細雪sasame yuki、
    六花 mutsuno hana、初雪 hatsu yuki、深雪 mi yuki、根雪 ne yuki、吹雪 fubuki、
    垂り雪 shizuri yuki、雪晴 yuki bare)
   

     いざさらば雪見にころぶ所まで     松尾芭蕉
     これがまあつひの栖(すみか)か雪五尺     小林一茶
     雪散るやおどけも言えぬ信濃空     小林一茶
     さびしさは木をつむあそびつもる雪     久保田万太郎
     降る雪や明治は遠くなりにけり     中村草田男
     障子明けよ上野の雪を一目見ん     正岡子規
     雪残る頂き一つ国境     正岡子規
     雪チラチラ岩手颪(おろし)にならで止む     河東碧梧桐
     際立って雪帯のかがやけば、麦を踏む     大須賀乙字
     東西南北より吹雪かな     夏目漱石   
     氷結の上上雪の降り積もる     山口誓子
     馬が目をひらいてゐたり雪夜にて     加藤楸邨
     さえざえと雪後の天の怒濤かな     加藤楸邨
     居酒屋の灯(ひ)に佇(たたず)める雪達磨     阿波野青畝
     雪の田の千枚(せんまい)能登の海に落つ     阿波野青畝
     ワイパーも今は必死の吹雪(ふぶき)かな     阿波野青畝
     手の傷も暮しの仲間雪青し     金子兜太
     雪の朝嬉しさ半分靴選び     稲森如風
     木の間よりそっと雪見る明けの月     稲森如風
     かりそめの雪の花咲く枯れ桜     稲森如風
     比ぶれば梅より白き雪の花     稲森如風
     枯れ枝も華やぐ雪の並木道     稲森如風
     つれなさは都心の雪ぞ二年ぶり     稲森如風
     大安の真白き冨士に出会いけり     稲森如風
     雲怪し有馬記念は雪となり     稲森如風
     初孫や初雪二十日辰の年     稲森如風
     初雪や桜並木を横なぐり     稲森如風
     初雪もかるにはただの寒さかな     稲森如風
     この夜は雪になるとか今朝の雲     稲森如風
     いちどきに梅と桜や雪の花     稲森如風
     道怖々枯れ木の花の雪見かな     稲森如風
     富士はるか祈りを誘う雪の嶺     稲森如風
     凍て雪やテニスコートに人はなく     稲森如風
 

   (風花/かざはな kaza hana、風花 kaze hana)
     晴天にちらつく雪。
 

      宮城野のどの子に触るる風花ぞ     藤田湘子

   (氷/こおり koori、初氷 hatsu goori、氷張る koori haru、氷柱 tsurara、
    垂氷 taruhi、月氷る tsuki kooru、影氷る kage kooru)

     かるがもが朝寝を選ぶ初氷     稲森如風
     水影の揺れぬ所ぞ初氷     稲森如風
 

    (樹氷/じゅひょう jyu hyou、霧氷 mu hyou、雨氷 u hyou、木華 ki bana、木花咲く ki bana saku)

「風」に関連する季語:
   (凩/こがらし kogarashi、木枯し ko gara shi〉
      晩秋から冬の始めに吹く冷たく強い風。

     こがらしや岩に裂け行く水の声     与謝蕪村
     凩や女は抱く(いだく)胸を持つ     加藤楸邨
     凩や海に夕日を吹き落す     夏目漱石
     もしジャズが止めば凩ばかりなり     寺山修司
     木枯しの一号走る梢かな     稲森如風
 

   〈北風/きたかぜ kitakaze、北吹く kitafuku、大北風 oogita、北ならい kitanarai、朝北風 asagita〉
           【参考:東風 kochi(春)、南風 minami(夏)】   
 

     北吹くも木漏れ日浴びて鳥集う     稲森如風
     北風の掃く青空や白紅梅     稲森如風
     凩の道駆け抜けるジョガーかな     稲森如風
 

 

   〈空風/からかぜ kara kaze、 空っ風 karakkaze、乾っ風 karakkaze〉
   〈北颪/きたおろし kita oroshi、 浅間颪 asamaー、六甲颪 rokkouー、比叡颪 hieiー、富士颪 fujiー〉
   〈寒風/かんぷう knpuu、 冬の風 fuyu no kaze〉
   〈玉風/たまかぜ tama kaze<日本海>、べっとう bettou<東海道>、
    乾風 anaji<西日本>、たば風 tabakaze〉
   〈髪渡/かみわたし kami watashi、 神立風 kamitatsu kazee〉
   〈星の入東風/ほしのいりごち hoshi no irigochi〉
   〈隙間風/すきまかぜ sukima kaze 〉
   〈虎落笛/もがりぶえ mogaribue〉

     一汁一菜垣根が奏(かな)づ虎落笛     中村草田男
     夕づつの光りぬ呆きぬ虎落笛     阿波野青畝
 

「冬」のつく季語:
   (冬の日/ふゆのひ fuyu no hi、冬日 fuyu bi、冬日向 fuyu hi nata、冬日影 fuyu hi kage)
 

     冬の日や馬上に氷る影法師     松尾芭蕉
     行く馬の背の冬日差はこばるる     中村 草田男
     冬の餌や思いの外の鳥もよし     稲森如風
     冬日向年増美人は四十雀     稲森如風
     冬餌付け姿を見せた町の鳥     稲森如風
     冬日影足踏み外すめじろかな    稲森如風
     冬の日や返り見すれば朝の月    稲森如風
 

   (冬の空/ふゆのそら fuyu no sora、冬空 fuyu zora、寒空 samu zora、凍空 ite zora、枯木空 karekizora【如風】)

     冬空にせめて黄金の銀杏かな     稲森如風
     冬空やどこにいるのか雲の画家     稲森如風
     寒空やめじろは梅の花の中     稲森如風
     鳩の群寒空よりも石畳     稲森如風
     冬空に翼色々鳩の群     稲森如風
     冬空や夏の雲だと子がはしゃぐ      稲森如風
     寒空も娘とパスタランチかな     稲森如風
     枯木空深呼吸する楓かな     稲森如風
     風のまま雲も気ままに冬の空     稲森如風
     寒空に一直線や飛行曇     稲森如風
     白梅や花ちらほらと寒空に     稲森如風
 

   (冬晴/ふゆばれ fuyu bare、冬日和 fuyu bi yori、冬麗 fuyu urara)

     冬日和ひよどり君の食いっぷり     稲森如風
     冬晴れや飛行機雲の軌跡追う     稲森如風
     冬晴や子供マラソンどやどやと     稲森如風
     冬晴やゆらりゆらりと波日影     稲森如風
     冬晴や池までぴょぴょぴょん石叩き     稲森如風
     冬晴や欅楠雲はるか     稲森如風
 

   (冬の雲/ふゆのくも fuyu o kumo、冬雲 fuyu gumo、凍雲 ite gumo)

     冬の雲白い絵の具の筆の跡     稲盛如風
     来る年の龍の姿や冬の雲     稲盛如風
     こは何かしでかしそうな冬の雲     稲盛如風
     冬雲の裸仁王や厳として     稲盛如風
 

   (冬の雨/ふゆのあめ fuyu no ame)、
   (冬の錐/ふゆのきり fuyu no kiri、寒の霧 kan no kiri、スモッグ sumoggu、煙霧 enmu)、
   (冬霞/ふゆがすみ fuyu gasumi、寒霞 kangasumi、冬の靄 fuyu no moya、寒靄 kan ai)、

     冬霞すっと消えゆく靴の音     稲森如風
 

   (冬の虹/ふゆのにじ fuyu no niji、冬虹 fuyu niji)
   (冬入日/ふゆいりひ fuyu irihi):冬日入る fuyu bi iru)
   (冬夕焼/ふゆゆうやけ fuyu yuu yake、冬茜 fuyu akane、冬夕日 fuyu yuu hi) 
 

     卵黄を掻き解き掻き解く冬夕焼     中村 草田男
     トウカエデ枝の間に間に冬茜     稲森如風
     冬曇青に惹かれるカメラかな     稲森如風
     はからずも銀座一丁目の冬夕焼     稲森如風
     赤と黒スカイツーや冬夕焼     稲森如風
     初孫の眠るや富士の冬夕焼     稲森如風
     冬夕焼け映す鏡や塔の池     稲森如風
 

   (冬の星/ふゆのほし fuyu no hoshi、冬銀河 fuyu ginag、寒星 kansei、
    天狼 tenrou、寒昴 kansubaru、オリオン orion、六連星 mutsuraboshi)
         【参考:流星 ryuusei、星月夜 hoshi zukiyo(秋)】
   (冬の月/ふゆのつき fuyu no tsuki、寒月 kan getsu、寒三日月 kan mi  ka zuki、
                           月氷る tsuki koo ru、月冴える tsuki sa e ru)

   (冬凪/ふゆなぎ fuyunagi)     【参考:朝凪 asa nagii(夏)、夕凪 yuu nagi(夏)】
   (冬旱/ふゆひでり fuyu hideri、寒旱/かんひでり kan hideri)

     大杉の木の間に朝の冬の月     稲森如風
     寒月や雲の衣もまとわずに     稲森如風
 

その他の季語:
   (鰤起し/ぶりおこし buri okoshi)
   (ダイヤモンドダスト daiyamonndo dasuto、氷晶 hyousyou、氷塵 hyoujin、霧雪 musetsu)