1.時候(季節・月名・陽気)

春(はる haru):俳句における季節(季語)の分類は、「二十四節季と季節の定義」を参照してください。
   陽春 yousyun、東帝 toutei、三春 sansyun、初春syosyun、仲春 chuusyun、晩春 bansyun
   立春 rissyun、雨水 usui、啓蟄 keichitsu、春分 syunbun、清明 seimei、穀雨 kokuu

     春立ちてまだ九日の野山かな     松尾芭蕉
     春や昔十五万石の城下哉     正岡子規
     蟇(ひき)ないて唐招提寺春いづこ     水原 秋桜子
     立春の米こぼれをり葛西橋     石田 波郷
     しとやかに春を迎えし枝垂れ梅     稲森如風
     かるがものつがい麗し春立ちぬ     稲森如風
     那須の旅春いっときの雪見かな     稲森如風
     胡蝶花春のお祭り気分かな     稲森如風
     立春にあふれる水の光かな     稲森如風
     水清らスーイスーイと春のかる     稲森如風
     春のかるピタリと揃う毛繕い      稲森如風
     四十雀こいこいこここいはーるよこい     稲盛如風
     春のかる泰然として我を見る     稲盛如風
     かるがものひとかき春の静まりぬ     稲盛如風
     名の春や水面のかるも伏目がち     稲盛如風
     唐崎の松すっきりと江戸の春     稲盛如風
     蓬莱や庭師佐兵衛の夢の春     稲盛如風
     春の路地金のなる木や浮世風呂     稲盛如風
     神楽坂羽織姿で春が行く     稲盛如風
 

   (彼岸/ひがん higan、入り彼岸 irihigan、中日 chuunichi、終い彼岸 shimaihigan、
    彼岸寒 higanzamu、木の芽寒 konomezamu) 
      春分と前後3日間。     【参考:秋彼岸 aki higan(秋)】 

     ああ寒いあらあら寒いひがん哉     小林一茶
     雪深々その山けぶる彼岸かな     稲盛如風
     おう寒いまだまだ寒い彼岸かな     稲盛如風
 

   (八十八夜/はちじゅうはちや hachijyuu hachiya)
      5月2日、3日ごろ。立春から88日目。

「月の呼称」の季語:
   〈睦月/むつき mu tsuki、太郎月 ta rou zuki、祝月 iwai zuki〉
      旧暦1月の異称、現在では新暦1月の別名としても用いる。
   〈如月/きさらぎ kisara gi、梅見月 mumemi tsuki、木目月 konome tsuki〉
      旧暦2月の異称、現在では新暦2月の別名としても用いる。
   〈弥生/やよい ya yoi、花見月 hana mi zuki、桜月 sakura zuki、夢見月 yume mi zuki〉
      旧暦3月の異称、現在では新暦3月の別名としても用いる。

     三月尽風唸る日の開花かな     稲盛如風
 

「春の特徴」を表現する季語
   (佐保姫/さおひめ sao hime ):
      春の女神       【参考:龍田姫 tatsuta hime(秋)】
   (鷹化して鳩となる/たかかしてはととなる takakashite hatotonarru ):

     鷹化して鳩となるとか花巡り     稲盛如風

   (冴返る/さえかえる sae kaeru):寒の戻り kan no modori
      春温かくなった後、寒さがぶり返すこと。

     三日月はそるぞ寒さは冴えかへる     小林一茶
     空覆う枯れ枝の道冴え返る     稲盛如風

   (料峭/りょうしょう ryousyou):春寒料峭 syu kan ryousyou
      春先の風が冷たいこと。

   (木の芽時/このめどき konome doki):木の芽病 konome byou
      木が芽を出す時期。
 
   (暖か/あたたか atataka):春暖 syundan、温し nukushi
      春の心地よい温度。

     漣に乗るかるがもや風温し     稲森如風
     暖かや鶫は帰る日を忘れ     稲森如風
 

   (麗か/うららか uraraka):麗日 reijitsu、うらら urara
      春の晴れた日に、すべての物がのどかに輝く様子。

     かるのペアウォーターベッドで春あらら     稲森如風
     かるの妻寝坊きめこみ春うらら     稲盛如風
     春麗顔を見合す鶫かな     稲盛如風

   (長閑/のどか nodoka):長閑さ nodokasa、長閑 nodoroka、駘蕩 taitou、春心 harugokoro
      のんびりと穏やかな春の気分。

     長閑さや浅間のけぶり昼の月     小林一茶
     かるがもも波もゆらりと春心     稲森如風
     のどかさやかるがも関白妻を呼ぶ     稲盛如風
     のどかさや後楽のつぐみ歌しきり     稲盛如風

   (日永/ひなが hinaga):永日 eijitsu、永き日 nagaki hi、日永し hii nagashi
      春分を過ぎ、日ごとに日が長く感じること。

      裏門のひとりでにあく日永かな     小林一茶
      水清しかるがも嬉し日は永し     稲森如風
      龍の雲か鷲の雲かと日永かな     稲森如風
 

   (遅日/ちじつ chijitsu):春日遅々 syunjitsu chichi、暮遅し kure ososhi、
    遅き日 osoki hi、暮かねるkure kaneru
      春分を過ぎ、日ごとに日暮れガ遅くナッタ感じ。

「花」のつく季語:
   〈花時 hana doki、桜時 sakura doki〉、桜前線 sakura zensen
   〈花冷 hana bie、花の冷 hana no hie〉、花過ぎ hana sugi

     花冷えも桜、人、人ここかしこ     稲森如風
     花冷えや声も静まる宴かな     稲盛如風

   
「春」のつく季語:
   〈春節 syun setsu〉
   〈早春 sousyun、春めく haru meku、春浅し haru asashi〉

     病床の匂袋や浅き春     正岡子規
     春浅しなおたくましき霜柱     稲森如風
     早春に会うや別れのつぐみかな     稲森如風
     春めくや粋かいなせか四十雀     稲森如風

   〈春暁 syun gyou、春の朝 haru no asa、春の夜明け haru no yoake、春は曙 haru wa akebono〉

     シュピシュピと春あけぼのの四十雀     稲森如風
     かるの声「集まれ」と聞く春の朝     稲森如風

   〈春の日 harunohi、春日影 haruhikage、春日和 haru biyori〉

     ひよどりの林檎貪る春日影     稲森如風
     桜樹に対の尾長や春日和     稲森如風
     かるがもの独身貴族や春日和     稲森如風
     春の日や十一重の五輪塔(     稲森如風
     なだらかや笹山緑春日和     稲森如風
     鳥の見返り美人や春日和     稲森如風
     春日和黒の椋鳥いなせかな     稲森如風
 

   〈春の光 harunohikari、春の色 harunoiro、春景色 harugeshiki〉
   〈春昼 syun chyuu、春の昼 haru no hiru〉
   〈春の夕 haru no yuube、春夕 syunseki / haruyuube、春の暮 haruno kure〉

     雉の鳴く拍子に春は暮にけり     小林一茶
     水鳥や春たそがれのさざれ波     稲森如風
 

   〈春の宵 haru no yoi、春宵 syun syou、宵の春 yoi no haru〉
   〈春の夜 haru no yoru、夜半の春 yowa no haru、春の夜 haru no yoru〉

     眠れねば眠らず春夜去来抄     山田みずえ
 

   〈春深し haru fukashi、春闌 haru takenawa〉

     春闌(た)けぬをんなの耳を吸ふゆめも     藤田湘子
     友情のごときふぐりと春深し     藤田湘子
     春深し憎まれ雪で明ける朝     稲森如風

   〈暮の春 kure no haru、暮春 bosyun 、春暮るる haru kururu〉

     近づけば 山あそびゐる 春の暮     藤田 湘子

   〈行く春 yuku haru、春の名残 haru no nagori、春の果て haru no hate、春尽く haru tuku〉

     行く春や鳥啼き魚の目は涙     松尾芭蕉
     行く春を近江の人と惜しみける     松尾芭蕉
     行く春やおもたき琵琶の抱き心     与謝蕪村

   〈春惜しむ haru oshimu、惜春 seki syun〉
   〈春寒 haru samu / syun kan〉   〈春暑し haru atsushi〉

     春寒し水田の上の根なし雲     河東碧梧桐
     春寒やぶつかり歩く盲犬     村上鬼城
     春寒しかる立つ辺り寄せる波     稲森如風
     春寒し鳩着ぶくれて水の上     稲森如風
     春寒しペンギン立ちの鶇かな     稲盛如風
     ユゥフォルビァ泣くや笑うや春寒し     稲盛如風
     春寒や梢を渡る風の音     稲森如風
     夕陽待つ東の雲や春寒し     稲森如風
     春寒し青空恋し雲恋し     稲森如風
     枯れ細る薄や春の寒き頃     稲森如風
     首埋め春寒料峭鳩の群     稲森如風
     春寒の雲や刹那の水墨画     稲森如風
 

「寒」のつく季語:
   〈寒明け kan ake、寒明ける kan akeru、寒過ぐ kan sugu、寒のあけ kan no ake〉
   〈余寒 yo kan、残る寒さ nokoru samusa〉
 

     地の底に残る寒さや霜柱     稲森如風
     枯れ枝に染みて残りし寒さかな     稲森如風
     見えぬ首鳩うずくまる余寒かな     稲森如風
     波の上に残る寒さやかるの恋     稲森如風
     桜木に残る寒さや雲白し     稲森如風
 

   〈汐干寒 siohi zamu、 苗白寒 nawashiro zamu〉

その他の季語:
   〈二月、三月、四月〉

     妹の嫁ぎて四月永かりき     中村草田男
 

   〈閏日〉【如風】

     閏日や吹雪にかすむ五輪塔     稲森如風
     閏日の雪や烏の笑い種     稲森如風