1.時候(季節・月名・陽気)

秋(あき aki):俳句における季節(季語)の分類は、「二十四節季と季節の定義」を参照してください。
   錦秋 kinsyuu、白帝 hakutei、三秋 sansyuu、
   初秋 syosyuu/hatsuaki、仲秋 chuusyuu、晩秋 bansyuu
   立秋 rissyuu、処暑 syosyo、白露 hakuro、秋分 syuubun、寒露 kanro、霜降 soukou
   今朝の秋 kesa no aki、雀蛤となる suzume hamaguri tonaru
   八朔 hassaku

     温泉(ゆ)の底に我が足見ゆるけさの秋     与謝蕪村
     今朝秋のよべを惜みし灯かな     大須賀乙字
     八朔は歌の博士の誕生日     高野素十
     たまごつちこの目で見ずに秋立ちぬ     山田みづゑ
     蝉撮りも奥が深いぞすでに秋      稲森如風
     雲は流れ空は墨絵に秋ここに     稲森如風
     雲淡しひと声秋の烏鳴く     稲森如風
     秋半ばとにもかくにも花日和     稲森如風
     レールのごとくたなびく雲や秋到る     稲森如風
     ひとつ咲きひとつ散りゆく秋の薔薇     稲森如風
     秋立ちぬ安泰八羽のかる家族     稲森如風
     秋立ちぬ衰え知らぬ夏の蝉    稲盛如風
     夏の蝉秋はいつまで鳴くのやら    稲盛如風
     三兄弟プールのかるの肥ゆる秋    稲盛如風
     かるの子やもはやチビとは呼べぬ秋    稲盛如風
     かるのチビ育てよ育て秋進む    稲盛如風
     秋逍遥巣立ち間近かかる六羽    稲盛如風
     かるの子よ油断大敵秋がらす    稲盛如風
     久しぶり秋のかるがも三兄弟    稲盛如風
     落っこちたかる羽ばたいて照れる秋    稲盛如風
     秋のかる数える癖はまだ抜けず    稲盛如風
     子の悲劇気にもかけずに秋のかる    稲盛如風
     雨雲にフリマや秋の日曜日    稲盛如風
     飛びたかろ大空高く秋のかる    稲盛如風
     雲白し空に飛び立て秋のかる    稲盛如風
     秋のかるどれが親やら子どもやら    稲盛如風
     秋のかる足投げ出して毛繕い    稲盛如風
     生き延びたかるの兄弟泳ぐ秋    稲盛如風
     飛び立てり一人前や秋のかる    稲盛如風
     秋のかる住まいはなんとプール付き    稲盛如風
     八羽から三羽残ったかるの秋    稲盛如風
     秋の実に可憐と名付け立ち去りぬ    稲盛如風
 

「月の呼称」の季語:
   (文月/ふみづき fumi zuki、文月 fu zuki、七夕月 tana bata zuki)
      旧暦7月の異称、現在では新暦7月の別名としても用いる。
   (葉月/はづき ha zuki、月見月 tsuki mi zuki、秋風月 aki kaze zuki)
      旧暦8月の異称、現在では新暦8月の別名としても用いる。
   (長月/ながつき naga tsuki、月kiku zuki、菊の秋 kiku no aki、紅葉月 momiji zuki):
      旧暦9月の異称、現在では新暦9月の別名としても用いる。

「秋の特徴」の季語:
   〈龍田姫/たつたひめ tatsutahime〉     【参考:佐保姫 sahohime(春)】
   (爽か/さわやか sawayaka、爽気 souki、さやか sayaka、さやけし sayakeshi)
   (夜長/よなが yonaga、長き夜 nagakiyo、夜長人 yonagabito)
   (釣瓶落し/つるべおとし tsurubeotoshi、日暮れ急 higurekyuu )
 

     夜長し四十路かすかなすわりだこ     中村草田男
     さわやかにきらきらきらり水の音      稲森如風
 

「秋」のつく季語:
   〈秋暑/しゅうしょ syuusyo、秋暑し akiatsushi、残暑 zansyo、残る暑さ nokoru atsusa〉
   〈秋涼/しゅうりょう syuuryou、新涼 shiryou、秋涼し aki suzushi、初涼 syoryou、涼新た ryou arata〉
   〈秋めく/あきめく aki meku、秋づく aki zuku〉
   〈秋浅し/あきあさし aki asashi、秋口 aki guchi、新秋 shinsyuu〉
   〈秋色/しゅうしょく syuusyoku、秋の色 aki no iro、秋の光 aki no hikari、秋景色 aki gesiki〉
   〈秋気/しゅうき syuuki、秋気澄む syuuki sumu、秋澄む aki sumu〉
   〈秋麗/あきうらら/しゅうれい akiurara / syuurei〉
   〈秋彼岸/あきひがん akihigan、秋の彼岸 aki no higan〉    【参考:彼岸 higan (春)】
   〈秋の朝/あきのあさ aki no asa、秋暁 syuugyou、秋の夜明け aki no yoake 〉
   〈秋の昼/あきのひる aki no hiru〉
   〈秋の暮/あきのくれ aki no kure、秋の夕 aki no yuu、秋の夕暮れ aki no yuugure〉
   〈秋の宵/あきのよい aki no yoi、宵の秋 yoi no aki〉
   〈秋の夜/あきのよる aki no yoru、秋夜 syuuya、夜半の秋 yowa no aki〉
   〈秋の闇 aki no yami 〉            【参考:春の闇 haru no yami(春)】
   〈秋深し/あきふかし aki fukashi、秋闌くる aki takuru、秋寂ぶ aki sabu、秋更くる aki fukuru、深秋 shinsyuu、
    冬近 fuyuchikashiし、冬隣 fuyudonari、冬を待つ fuyuwo matsu〉
   〈芋の秋/いものあき imo no aki〉
   〈暮の秋/くれのあき、暮秋、秋暮るる〉
   〈行く秋/ゆくあき yuku aki、秋行く aki yuku、秋の名残 aki no nagori、秋過ぐ aki sugu、秋の果 aki no hate〉
   〈秋惜しむ/あきおしむ aki oshimu〉

 

     死にもせぬ旅寝の果てよ秋の暮     松尾芭蕉
     此の道や行く人なしに秋の暮     松尾芭蕉
     秋深き隣は何をする人ぞ     松尾芭蕉
     身の秋や今宵をしのぶ翌(あす)もあり     与謝蕪村
     行く秋の我に神なし仏なし     正岡子規
     正直にものいひて秋ふかきかな     久保田万太郎
     秋夜遭ふ機関車につづく車輛なし     山口誓子
     貌見えてきて行き違ふ秋の暮     中村草田男
     新涼や刃物三丁研ぎすまし     鈴木真砂女
     新秋や女体かがやき夢了る     金子兜太
     かるの子のチャプンともぐる残暑かな      稲森如風
     かるの子に残る暑さや毛繕い      稲森如風
     空蝉の化石となりし残暑かな     稲森如風
     向日葵は今日も笑顔の残暑かな     稲森如風
     残暑超えなお花白し百日紅     稲森如風
     どしゃぶりの雨が蹴飛ばす残暑かな      稲森如風
     秋麗イベントの鷹の威嚇かな     稲森如風
     秋麗きらめき落ちる水の音      稲森如風
     秋の朝白薔薇ひとつ咲きにけり     稲森如風
     かるの子よ眠れよ眠れ秋の暮     稲森如風
     かる六羽大人並なり秋うらら     稲森如風
     大空に男雲湧く残暑かな     稲森如風
     獅子雲の口を開けたる残暑かな     稲森如風
     羽伸びてかるは青年秋涼し     稲森如風
     山並みの淡くなりゆく秋の暮     稲森如風
     秋深しさびはピエロのバイオリン     稲森如風
     アベリアの花の白さよ秋深し     稲森如風
     秋闌けて今年生まれのかるが飛ぶ     稲森如風
     青空に舞うかるの子や冬隣     稲森如風
     秋麗一声一気尾長哉     稲森如風
 

「寒」「冷」に関連する季語:
   〈漸寒/ややさむ yayasamu、やや寒し yayasamushi、漸く寒し youyakusamushi、秋寒 akisamu、肌寒 hadasamu〉
   〈そぞろ寒/鶏皮/そぞろさむ sozorosamu、すずろ寒 suzurosamu 〉
   〈うそ寒/うそさむ usosamu、うすら寒 usurasamu、薄寒 ususamu〉
   〈冷やか/ひややか hiyayaka、冷ゆる hiyuru、ひやひや hiyahiya、秋冷 syuurei、朝冷 asabie、下冷 shimobie〉
   〈冷まじ/すさまじ susamaji〉            【参考:冷たし tsumetashi(冬)】
   〈身に入む/みにしむ minishimu〉
 

     野ざらしを心に風のしむ身かな     松尾芭蕉
     紫陽花に秋冷いたる信濃かな     杉田久女
     そぞろ寒淡い黄色の薔薇ふたつ     稲森如風
     肌寒し湯気の雲かなラーメンショー     稲森如風
 

その他の季語:
   〈二百十日/にひゃくとおか nihyaku tooka〉、〈二百十日/にひゃくとおか nihyaku hatsuka〉
   〈龍淵に潜む/りゅうふちにひそむ ryou fuchi ni hisomu、龍淵に ryuufuchini〉