1.時候(季節・月名・陽気)

冬(ふゆ fuyu):俳句における季節(季語)の分類は、「二十四節季と季節の定義」を参照してください。
   冬帝 toutei、冬将軍 fuyu syougun、三冬 santou、
   初冬 syotou/hatsufuyu、仲冬 chuutou、晩冬 banto、
   立冬 rittou、小雪 syousetsu、大雪 taisetsu、冬至 touji、小寒 syoukan、大寒 daikan
 

     月花の愚に針立てん寒の入り     松尾芭蕉
     物干の影に測りし冬至かな     正岡子規
     めじろ来て華やぐ庭の冬の色     稲森如風      
     冬の庭リンゴで小鳥誘いけり     稲森如風
     大寒もあたたかかるの群れ遊ぶ     稲森如風
     公園に風とどろきて冬到る     稲森如風
     スギ 楓 銀杏に雲や 冬 東京     稲森如風
     電線が切り刻みたる冬の富士     稲森如風
     梅早し冬至と聞けばなおさらに     稲森如風
     ある微笑冬一輪の梅の花     稲森如風
     大寒の梅カラカラと笑いけり     稲森如風
     冬の入かるの居眠り水の上     稲森如風
     立冬の次の日のこと石蕗の花     稲森如風
     大樹より炎の雲や冬初め     稲森如風
     もぐるたび波紋広がる冬のかる     稲森如風
     駒沢の切られの与三や冬の富士     稲森如風
     朝の月二度振り返るたこの冬     稲森如風
     波強しただ浮かんでる冬のかる     稲森如風
     冬のかる波のゆりかごこっくりと     稲森如風
     冬のかる犬吠える度首かしげ     稲森如風
     フェルメールブルーの空に冬の塔     稲森如風
     冬の庭客は目白と四十雀(     稲森如風
 

   〈節分/せつぶん/せちぶん setsubun / sechibun、節替り setsu gawari〉

     節分や雪と別るる枝垂れ梅     稲森如風
     節分や庭にくる鳥福の内     稲森如風

     

「月の呼称」の季語:
   (神無月/かんなづき kan na zuki、時雨月shigure zuki)
      旧暦10月の異称、現在では新暦10月の別名としても用いる。
   (霜月/しもつき shimo tuki、雪待月yuki machi zuki、霜降月 shimo furi zuki)
      旧暦11月の異称、現在では新暦11月の別名としても用いる。
   (師走/しわす shi wasu)
      旧暦12月の異称、現在では新暦12月の別名としても用いる。

     水に映るかるの朝寝や師走晴れ     稲森如風

「冬の特徴」の季語:
   (小春/こはる ko haru、小春日 ko haru bi、小春日和 ko haru bi yori、
                  小春空 ko haru zora、小春凪 ko haru nagi)
      旧暦10月、新暦11月ころのポカポカした陽気。
 

     小春日のをんなのすはる堤かな     室生犀星
     小春日や石を噛み居る赤蜻蛉      村上鬼城
     小春日や宇宙にひとつ富士の山     稲森如風
     小春日のプールにちゃっかりかるは住む     稲森如風
     小春空梢の薔薇は孤高なり     稲森如風
     小春日に羽白の眠る深さかな     稲森如風
     小春日や羽白はプールを独り占め     稲森如風
     かるの池鳩もくつろぐ小春かな     稲森如風
     小春日やプールに映る影しばし     稲森如風
     鳥影の翼広げる小春かな     稲森如風
 

   (短日/たんじつ tannjitu、日短 hi mijika、暮早し kure hayashi、日つまる hi tsumaru)

     短日や されどあかるき 水の上     久保田万太郎

   (冴ゆる/さゆる sa yuru、冴え、星冴ゆる、風冴ゆる、さえざえ)
      とても寒く、空気が澄みきった感じ。
 

     水色の空冴え渡り綿の雲     稲森如風
 

   (年の暮/としのくれ toshi no kure、年の瀬 toshi no se、年暮れる toshi kureru、年忘れ toshi wasure)

     月雪とのさばりけらし年の暮     松尾芭蕉
     人に家を買はせて我は年忘れ     松尾芭蕉
     芭蕉去ってそののちいまだ年くれず     与謝蕪村
     ともかくもあなた任せの年の暮     小林一茶
     暮の月銀座へ向かう道すがら     稲森如風
     三越のイルミネーション暮れる年     稲森如風
 

   (大晦日/おおみそか oo misoka、大晦日 oo tsugomori、大年oo dosi、大三十日 oo misoka、年の空 toshi no sora)

     漱石が来て虚子が来て大三十日     正岡子規

   (除夜/じょや、年の夜 toshi no yoru、行く年 yuku toshi、年惜しむ toshi oshimu)

     除夜零時過ぎてこころの華やぐも     山口誓子
 

冬のつく季語: 

   〈冬深し/ふゆふかし fuyu fuka shi、真冬 ma fuyu、冬たけなわ fuyu takenawa、冬さぶ fuyu sabu〉

     冬深し柱の中の濤(なみ)の音     長谷川 櫂

   〈冬の朝/冬の朝 fuyu no asa、寒暁 kangyou、冬暁 tougyou / fuyu akatsuki〉

     冬の朝きらりききら波日影     稲森如風
 

   〈冬の暮/ふゆのくれ guyu no kure、冬の夕 fuu no yuu、寒暮 kanbo〉

      冬の暮食事忙しきめじろかな     稲森如風

   〈冬の夜/ふゆのよる fuyu no yoru、寒夜 kanya、夜半の冬 yowa no fuyu〉
   〈冬ざれ/ふゆざれ fuyu zare、冬され fuyu sare、冬ざるる fuyuzaruru〉
   〈冬惜しむ/ふゆおしむ fuyu oshimu、冬の名残 fuyu no nagori、冬の別れ fuyu no wakare〉
   〈冬尽く/ふゆつく fuyu tsuku、冬終る fuyu owaru、冬の果 fuyu no hate、冬行く fuyu yuku、冬去る fuyu saru〉
   〈暖冬/だんとう dantou〉
   (冬ぬくし/ふゆぬくし fuyunukushi、冬暖か fuyuatataka)

     かるがもの居眠り縦隊冬ぬくし     稲森如風

「寒」「冷」「凍」のつく季語:

   〈寒し/さむし samu shi):寒気 kan ki、寒さ samu sa、寒 kan〉

     鞍とれば寒き姿や馬の尻     河東碧梧桐
     寒の暁ツイーンツイーンと子の寝息     中村 草田男
     学問の黄昏さむく物を言はず     加藤楸邨
     突き刺さる寒さは青き木の間より     稲森如風
     水寒し足の細さよ白鶺鴒     稲森如風
     寒き夜や首も固まる皆既食     稲森如風
     月赤し皆既食待つ寒き夜に     稲森如風
     微動だにせずに羽白の寒さかな     稲森如風
     水面に羽白固まる寒さかな     稲森如風
     とうかえで雲を突き刺す寒さかな     稲森如風
     満月も夜は遊べぬ寒さかな     稲森如風
     寒々と林檎にきつつき目白かな     稲森如風
     水浴びや寒くないのか石叩き     稲森如風
 

   〈寒波/かんぱ kanpa〉
   〈寒の内/かんのうち、寒、寒中〉
   〈寒の入/かんのいり、寒に入る kan ni niru〉

     寒の入首を埋める鳩もあり     稲森如風
     寒の入浮世見下す鳩目線     稲森如風
 

   〈厳寒/げんかん、厳冬 gentou、酷寒 kokkan、極寒 gokan、寒厳し kankibishi〉
   〈三寒四温/さんかんしおん sankansion、四温日和 shion biyori〉

   〈冷たし/つめたし tsume tashi):冷え hie、底冷 soko bie、寒冷kan rei〉

   〈凍る/こおる koo ru):凍つ i tsu、しばれ shibare〉

     凍る朝ヒマラヤスギに陽の光     稲森如風
     富士はるか白き高嶺や大寒波     稲森如風

「春」のつく季語:
   〈春を待つ/はるをまつ haru wo matu、春遠し haru too shi〉

     時ものを 解決するや 春を待つ     高浜虚子

   〈春近し/はるちかし haru tika shi、春隣 haru donari、春まぢか haru majika、春便り haru dayori〉

     蛸の足三本買って春隣     鈴木真砂女
     満開は春待て梅の六分咲き     稲森如風
     春近しぽつりぽつりと枝垂れ梅     稲森如風
     そわそわと枝垂れる梅や春隣     稲森如風
     掃除すみかる待つ池に春近し     稲森如風
 

   〈春をせかせる/はるをせかせる haruo sekaseru〉【如風】

     飛行雲春をせかせる乱舞かな     稲森如風
 

その他の季語:
   〈数え日/かぞえび kazoebi、日を数う hi o kazou〉
   〈電飾/でんしょく densyoku、イルミネーション irumineesyon〉【如風】
 

     電飾で取り戻す心丸の内     稲森如風