10.植物(草木一般)

「冬らしさ」の季語:
   (木の葉/このは konoha、木の葉散る konoha chiru、木の葉雨 konoha ame、
    木の葉時雨 konoha shigure)
     落葉も枯れ葉もいう。 

     猫の子のちょつと押える木の葉かな     小林一茶
     葉ちりぢり友なし小鳥うずくまる     大須賀乙字

   (帰り花/かえりばな kaeri bana、戻り花 modori bana、忘れ花 wasure bana、
    狂い咲 kurui zaki、二度咲 nido zaki)
     11月ころの温かい時期に、桜・山吹・つつじなどが、時ならぬ花を咲かせること。

   (早梅/そうばい soubai、冬の梅 fuyunoume、梅早し umehayashi)     【参考:梅( ume 春)】
     冬の内に早くも咲く出す梅。 

     わが胸にすむ人ひとり冬の梅     久保田万太郎
     めでたさや白と紅との梅早し     稲森如風

   (侘助/わびすけ wabisuke):
     椿の園芸種、茶人好みの小輪の花。
     茶道のワビ(侘)とスキ(好)の複合語、また千宗易の下僕の侘助にちなむともいう。

   (雪折/ゆきおれ yukiore):
     雪の重みで木の枝や幹が折れること。又その木や枝。

「落葉」のつく季語:
   (落葉/おちば ochiba、落葉時 ochibadoki、落葉山 ochibayama、落葉箒 ochiba houki、落ち葉掃く ochiba haku)

     待人の足音遠き落葉かな     与謝蕪村
     西吹けば 東にたまる落葉かな     与謝蕪村
     吹きたまる落葉や町の行き止り     正岡子規
     落葉掻(か)くは亡き母の後ろ姿かな     大須賀乙字
     むさしのの空真青なる落葉かな     水原秋桜子
     日洩れては急ぐ落葉や炎天寺     石田波郷
     桜もみじ愛でる間もなく落葉かな     稲森如風
     桜もみじ散り敷く道の静けさよ     稲森如風
     木漏れ日に誘われて踏む落葉かな     稲森如風
     桜木の落葉の園に朝陽射す     稲森如風
     落葉散る梢に白し朝の月     稲森如風
     落葉掃きほっと見上げる日暮雲     稲森如風
     地に落葉枝にもみじの桜かな     稲森如風
     公園は雨のち曇り落葉飛ぶ     稲森如風
     雨上がり銀杏並木の落葉かな     稲森如風
     木漏れ日に黄金の銀杏落葉かな     稲森如風
     雨に落つ並木の銀杏黄葉かな     稲森如風
     落葉さえ光を放つ銀杏かな     稲森如風
     ブランコの子にきらきらと落葉かな     稲森如風
     枝黄葉落葉に色を移しけり     稲森如風
     ふうわりと積もる落葉に朝陽指す      稲森如風
 

   (落葉籠/おちばかご ochiba kago、落葉名残 ochiba nagori、落葉焚き ochiba taki)
   (銀杏落葉/いちょうおちば ichou ochiba、銀杏枯る ichou karu)
       【参考:銀杏散るichou chiru、銀杏 ginnan 、銀杏黄葉 ichou momiji (秋)】

     銀杏落葉子が蹴り上げて金の蝶     稲森如風

   (柿落葉/かきおちば kaki ochiba、柿の葉散る kakinoha chiru)     【参考:柿 kaki (秋)】       
   (朴落葉/ほおおちば hoo ochiba、朴散る hoo chiru)     【参考:朴の花 hoo no hana (夏)】
       

「枯」「裸」のつく季語:
   (冬枯/ふゆがれ fuyu gare、枯る karu)
   (霜枯/しもがれ shimo gare)
   (枯木/かれき kareki、枯木立 kare kodachi、枯木宿 kareki yado、枯木星 kareki boshi、
       枯枝 kareeda、裸木 hadakagi) 

     枯木立地にたくましき幹の影     稲森如風
     朝の月すずめ一羽の枯木かな     稲森如風
     枯枝の先に白雲墓参り     稲森如風
     裸木や花の命の侘び住まい     稲森如風
     枯れ銀杏風吹き抜ける木の間かな     稲森如風
     青空に万才連呼や枯木立      稲森如風
     青空にげにすっぴんの枯れ銀杏      稲森如風
     青空や嬉し恥ずかし枯れ桜      稲森如風
     流れ雲枯木の先に見え隠れ      稲森如風
     青空や枯れ残る葉の未練かな      稲森如風
     枯銀杏青空に雲流れゆく      稲森如風
     枯桜すっからかんや有馬後      稲森如風
     枯桜ぽつぽつぽつと蕾かな      稲森如風
     夕暮れや水面にかると枯木立      稲森如風
     絹雲に見惚れているか枯銀杏      稲森如風
     薄曇墨絵に染まる枯銀杏      稲森如風
     枯欅薄日眩しき梢かな      稲森如風
     雲の鳥枯木立より飛び立ちぬ      稲森如風
     プラタナス一直線や枯木立      稲森如風
     枯木空御苑見下ろすドコモビル      稲森如風
 

   (枯葉/かれは  kareha、朽ち葉 kuchiba)     【参考:病葉 wakuraba(夏)】
   (枯芙蓉/かれふよう kare fuyou、芙蓉枯る fuyou karu)    【参考:芙蓉 fuyou (秋)】
   (枯草/かれくさ kare kusa、草枯る kusa karu、草枯 kusa gare)     【参考:夏草 natsu kusa(夏)】
   (枯芝/かれしば kare shiba)     【参考:若柴 waka shiba (春)、青芝 ao shiba(夏)】

 

     枯芝を叩くや御苑の石叩き      稲森如風
 

   (枯葎/かれむぐら kare mugura)     【参考:葎 mugura (夏)】
   (枯蘆/かれあし kare ashi、葦枯る ashi karu、枯蘆原 kare ashihara)     【参考:青葦 ao ashi(夏)】
   (枯萩/かれはぎ kare hagi、萩枯る hagi kru)     【参考:萩 hagi (秋)】
   (枯薄/かれすすき kare susuki、芒枯る susuki karu、枯尾花 kare obana、冬芒 fuyu susuki)
        【参考:薄 susuki(秋)】 

 

     我も死して碑に辺せむ枯尾花     与謝蕪村
 

   (枯蔦/かれつた kare tsuta、蔦枯るtsuta karu、枯蔓 kare zuru、枯葛 kare kazura)
          【参考:青蔦 ao tsuta(夏)、蔦紅葉 tsuta momiji(秋)】
   (枯桑/かれくわ kare kuwa、桑枯る kuwa karu)     【桑 kuwa (春)、夏桑 natsu kuwa(夏)】
   (枯菊/かれぎく kare giku、菊枯る kiku karu)     【菊 kiku (秋)】
   (枯芭蕉/かればしょう kare basyou、芭蕉枯る basyou karu)
        【芭蕉巻葉 basyou makiha(夏)、破芭蕉 yare basyou(秋)】
   (枯蓮/かれはす/かれはちす kare hasu / kare hachisu、蓮枯る hasu karu、蓮の骨 hasuno hone)
        【蓮 hasu (夏)】 

「冬」のつく季語:
   (冬枯/ふゆがれ fuyu gare、枯る karu)

     冬枯の木の間にビルのシルエット     稲森如風

   (冬萌/ふゆもえ fuyu moe)      【参考:草萌 kusa moe(春)】
   (冬草/ふゆくさ fuyu kusa、冬の草 fuyuno kusa、冬青草 fuyu aokusa)
        【参考:夏草 natsukusa(夏)】
   (冬木/ふゆき fuyu ki、冬木立 fuyu kodachi、冬木宿 fuyu ki yado 、冬木立 fuyu kodachi)

     冬木立ち月にあはれを忘れたり     与謝蕪村 
     斧入れて香におどろくや冬こだち     与謝蕪村
     大空に千手観音冬木立     稲森如風
     冬木立炎の雲を吐くごとく     稲森如風
     朝の月真知子巻きして冬樹かな     稲森如風
     冬木立かすかに色を残しけり     稲森如風
     冬銀杏どさりと散って静まりぬ     稲森如風
 

   (冬木の芽/ふゆきのめ fuyu ki no me、冬芽 fuyu me)     【参考:土用芽 doyou me(夏)】
   (冬柏/ふゆかしわ fuyu kashiwa、枯柏 kare kashiwa、柏散る kashiwa chiru)
   (冬林檎/ふゆりんご fuyu ringo)     【参考:林檎(秋)】

 

     冬林檎目白は食を争わず     稲森如風
     冬林檎味を占めたる目白かな     稲森如風
     目白にも運不運あり冬林檎     稲森如風
 

   (冬の梨/ふゆなし fuyu no nashi、晩三吉 oku sankichi)     【参考:梨 nashi(秋)】
   (冬苺/ふゆいちご fuyu ichigo、寒苺 kan ichigo)     【参考:苺 ichigo(夏)】
   (冬薔薇/ふゆばら/ふゆそうび fuyu bara / fuyu soubi)     【参考:薔薇 bara (夏)】

 

     思はずもヒヨコ生れぬ冬薔薇(ふゆいばら)     河東碧梧桐
     道端に大きな顔の冬の薔薇     稲森如風
     曇り空花の白さよ冬薔薇     稲森如風
 

   (冬菫/ふゆすみれ fuyu sumire、寒菫 kan sumire)     【参考:菫 sumire (春)】
   (冬桜/ふゆざくら fuyu zakura、寒桜 kan zakura)     【参考:桜 sakura (春)】
   (冬蕨/ふゆわらび fuyu warabi、寒蕨 kan warabi)     【参考:蕨 warabi (春)】
   (冬青の実/そよごのみ soyogono mi)
   (冬珊瑚/ふゆさんご fuyu sango、玉珊瑚 tama sango)

「寒」のつく季語:
   (寒林/かんりん kan rin、寒木 kan boku、寒木立 kan kodachi)
   (寒椿/かんつばき kan tsubaki、冬椿 fuyu tsubaki、早椿 haya tsubaki)
        【参考:椿 tsubaki (春)】

 

     ひっそりと蕾はなはな寒椿     稲森如風
     気品かなひそりと白き冬椿     稲森如風
     和室には赤に黄入りの寒椿     稲森如風
     八重咲きの白き椿に冬朝日     稲森如風
     寒椿色なき頃に赤々と     稲森如風
 

   (寒梅/かんばい kanbai、寒紅梅 kankoubai)     【参考:梅 ume (春)】
   (寒木瓜/かんぼけ kan boke)     【参考:木瓜 boke (春)】
   (寒菊/かんぎく kan giku、冬菊 fuyu giku)     【参考:菊 kiku (秋)】

 

     寒菊や日の照る村の片ほとり     与謝蕪村
     捨て置きし寒菊のふと咲きにけり     稲森如風
     冬菊のふくよかなるは一時半     稲森如風
 

 
   (寒牡丹/かんぼたん kan botan、冬牡丹 fuyu botan)     【参考:牡丹 botan (夏)】
   (寒芹/かんせり kan seri、冬の芹 fuyuno seri)     【参考:芹 seri (春)】
   (寒独活/かんうど kan udo、冬の独活 fuyuno udo)     【参考:独活 udo (春)】

「冬の草木」の季語:
   (南天の実/なんてんのみ nanten no mi、実南天 minannten、白南天 shironanten)
        【南天の花 nantenno hana(夏)】
   (藪柑子/やぶこうじ yabukouji、龍の玉 ryuuno tama)
   (千両/せんりょう senryou、万両 manryou、葉牡丹 habotan)
   (蝋梅/ろうばい roubai、唐梅 karaume、南京梅 nankinbai、素心蝋梅 soshinroubai)
 

     黄の花や素心蝋梅ほのかなり     稲森如風
 

   (青木の実/あおきのみ aokino mi)
   (/ひいらぎ hiiragi)

     葉牡丹や薔薇と聞いても怪しまず     稲森如風
     葉牡丹や椿も黙っていられない     稲森如風
 

「花」のつく季語:
   (山茶花/さざんか sazanka、茶の花 chano hana、八手の花hatsudeno hana、
       柊の花 hiiragino hana、花柊 hanahiiragi)

     山茶花のここを書斎と定めたり     正岡子規
     山茶花の木の間の窓や青い空     稲森如風
     紅白の山茶花たとえ不況でも     稲森如風
     山茶花は手折れとばかり枝先に     稲森如風
     山茶花も二日酔いかな乱れ咲き     稲森如風
     山茶花は一気呵成に咲きにけり     稲森如風
     雨の露ひいふう八重の山茶花に     稲森如風
     はらりはらり散る山茶花に朝の月     稲森如風
  

「紅葉」のつく季語:
   (冬紅葉/ふゆもみじ fuyu momiji、残る紅葉 nokoru momiji、紅葉散る momiji chiru、散紅葉 chiri momiji)
         【参考:紅葉 momiji (秋】)
 

     青空にふわりと残る黄葉かな     稲森如風
     月淡く残る紅葉や朝帰り     稲森如風
     楓散るどれみは空見の窓に雲     稲森如風
     鵯の声に驚き楓散る     稲森如風
     青空にからりと残る照り葉かな     稲森如風
     雨風の来ぬ間とばかり冬紅葉     稲森如風
     侘び寂びや残るもみじの雨上がり     稲森如風
     ひそひそとひそひそ残るもみじかな     稲森如風
     往く人もおうと見上げる冬紅葉     稲森如風
     行き過ぎてふと振り返る冬紅葉     稲森如風
 

その他(不明)
   (杉尾花/すぎおばな sugiobana)【冬:如風】
   (梅の花待つ/うめのはなまつ umenohanamatsu)【冬:如風】

     杉尾花どっと湧き出る蕾かな     稲森如風
     梅の花待つより林檎の目白かな     稲森如風